同調回路とブランコ

話を進めやすくするために、使われる用語を先に説明します。高いところにある物が
落ちると下にあったものを破壊しますが、そのような高さによって保持するパワー
のことを位置エネルギーと言います。同様に動いている物も何かにぶつかる
と破壊するパワーを運動エネルギーと言います。一方コンデンサに蓄えられる
電気を電気エネルギー、コイルに蓄えられた電磁石のパワーを電磁エネルギー
と言います。

LC_回路図
ブランコ
LC_回路図02

ブランコに乗った者が地面に着いた足で突っ張り、後ろの方へ移動して高さ
位置エネルギー)をかせいでいる状態(a)と考えられます。つまり、
「電気エネルギーが位置エネルギーに相当」します。スイッチをONにして、
コイルに電流を流し始める(足を地面から離す)と、コンデンサからの
電流が流れ出すのを妨げるような電圧がコイルに生じます。(電磁エネルギー)
次第に電磁エネルギーは減っていきますが、逆にコイルの磁気エネルギー
は増えていきます。(ブランコでは位置エネルギーがなくなる分、運動エネ
ルギーが増える。つまり、「電磁エネルギーが運動エネルギーに相当」します。
そして、コンデンサの電圧が0になった時点でコイルの電磁エネルギーは最大
になっています(ブランコでは位置エネルギーが0の時、運動エネルギー
が最大)。コンデンサの電気が0になった後は、コイルは蓄えた電磁エネ
ルギーで電流を流し続けます(ブランコは真下では止まらず蓄えられた
運動エネルギーによって反対方向へ揺れていく)。その電流によって、
今度はBの側を+として電気がたまっていきます。そして、コイルからの
電流がなくなるとコンデンサの充電も終了し電気エネルギーは最大に
なります(ブランコの揺れは反対側の最高点に達する)。以下同様に
繰り返します。
今の話では、最初コンデンサにあった電気エネルギーが一旦コイルの
電磁エネルギーに変わり、再びコンデンサの戻されたということになり
ます。ですから、コンデンサにもコイルにもエネルギーのロスが無け
れば、今の現象は永久に繰り返されるはずです(ブランコもつり下げ
られたロープの接点の摩擦や空気抵抗が無ければ永久に揺れつづける)。
さて今度は、ただブランコを揺らすのではなく、少し力を加えた
場合について考えてみましょう。
子供をブランコに乗せ、背中をそっと押すと、ブランコは静かにゆっく
り揺れ始めます。さらにそっと押しつづけると(押す力を強めなくて
も)ブランコは次第に大きく揺れるようになります。このとき肝心
なことは押すタイミングを揺れに合わせることです。先ほどのコン
デンサとコイルで作った回路をもう一度見てみましょう。コンデンサ
の容量 = キャパシタンス(電気を蓄える能力)をC、コイルのインダク
タンス(電流の変化を妨げる能力)をLで表します。コンデンサはCの
値が大きいほど放電や充電に時間がかかりますし、コイルはLの値
が大きいほど電流の変化を妨げる作用が大きいです。つまり、CもLも
両者の間をエネルギーが移動するスピードに関係するので、回路では
両者の関係による固有のスピードが生じることになります。先ほど
も見たように電流の流れは交流になるので、両者にとって固有の周波数
の交流が生じると言えるわけです。
そこで、この回路にこの固有の周波数の交流電圧を加えてみます。これ
がブランコをそっとタイミングよく押してあげるという話に相当します。
ブランコが次第に大きな揺れになるように、回路に流れる電流はどん
どん大きくなり、加えた電圧よりずっと大きな電圧がコンデンサやコイル
の両端に生じることになります。ただし、際限なく大きくなるわけでは
なく、コイルの内部抵抗などのせいで、ある一定の値で安定します。
コイルのQ値ということを耳にしたことがあるでしょうか。Q値が高い
というのはこの内部抵抗が低く、コイルとして性能が良いということを
意味しています(コンデンサでも損失の少なさをQ値として表す)。